日常3

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「そう。中央地区の奴ら、東に異動になるのを島流し、西だと都落ちって言うらしいんだ」 「じゃあ北部は?」 「網走行き」  何と言う隠語を……。 「で、その島流しのうちの一人が八島さんの元恋人ってわけだ。真木を虐めぬいて都落ちにしたのに自分も流されちまったってこと」  何とも因果応報というか。 「八島さんが言ったようにエタニティ専門店を作るために八島さんの号令一下、中央店の主だった奴らが今年の資格試験を受けたんだ。でも中央の奴ら、五人受けて一人しか合格しなかった。まあ、県下でも真木とそいつの二人だけだったからな、今回受かったのは」 「まさか、その受からなかった四人を?」 「そうだ。八島さんは自分の構想外にしたんだ。皆、中央地区から追い出したんだよ」  酷い話この上無い。別にエタニティに拘らなくても、皆、優秀な営業マンだっただろうに。 「そして、興味の無くなった恋人とも縁切りしたんだな」  なるほど。だから浩哉に拘るのか。 「疎ましく思っていた男も居なくなったし、真木は販売資格を取ったからな。八島さんの想いは募るばかりなんだろうよ」  坂井がジョッキをグイと空けて、店員に追加を頼む。俺も慌ててそれに続いた。冷たい生ビールが運ばれてくると、 「八島さんの元彼、うちに来たときには腑抜け状態でな。成績も挙げられないし休みがちだったから色々と相談に乗ってやったんだ。それでそいつが、真木にしたことを打ち明けてきたんだよ」  そうは言っても俺としては複雑な心境だ。確かにそいつは可哀想かもしれないが、浩哉にやったことは許せるものではない。でも一番の原因は八島さんだよな。 「えらく八島さんが真木にご執心なことが分かったからさ、真木もソッチ系なのかと疑っていたところで、おまえが真木と住んでいるって言うから、てっきりおまえもそうなのかと思ったわけさ」  うーん、確かに俺と浩哉はそういう関係になってはいるが……。  だからと言って、浩哉以外の奴と寝れるかと言われるとそれは絶対に無理だなあ。 「津川、これから気をつけろよ」
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