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さっきより雨足が強くなってきた。
アパートへと続く狭い路地を歩いていると、突風が吹いた。
後ろを歩いている妹の「きゃっ」と言う声が聞こえて、リックと一緒に振り向いたら傘が飛ばされていた。
リックは自分が持っていた傘を私に持たせ、妹の傘を拾いに走った。
傘を掴んでホッとしたその瞬間、速度を考えずに走ってきたオートバイにリックは接触し……
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あっという間の出来事だった。
妹がリックに駆け寄って体を揺すっていた。
でも動いている感じは全く無くぐったりしていて……
私はただ茫然と立ち尽くして見ているだけだった。
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私はそれから暫く実家に戻り、引き籠っていた。
仕事も退職した。
目の前でリックが亡くなって、立ち直ることなんてできなかった。
リックがもう、ここに居ないなんて信じられなかった。
貰った時にはピッタリと嵌まっていた左薬指の指輪も今はブカブカになり、ただひたすら、それを眺める日々が続いた。
そして、お月の物が来ないことに気づいた。
食事もあまりとってないし、不規則な生活をしているからだと一瞬思ったけれど、私には身に覚えがある。
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