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蝉の鳴く声、それだけで夏が来たんだと感じさせられる。
「千隼(ちはや)、アイス食わねーの?」
「あっ、食べる」
篤(あつし)に言われて、アイスを受け取った。
食べ切る前に溶けてしまうアイス。
「もう暑い・・・・・・無理ぃ」
「本当に千隼は夏が苦手だよな」
私と篤はこの夏、同棲を始めた。
チリンチリンーーと窓際で鳴る風鈴の音は、確かに涼しい音を出すけれど、暑がりな私の脳内を癒してくれるほどの効果は無い。
「クーラーつけようよ」
「もうすぐ出掛けるんだから、勿体ないよ。アイス食べたら行くよ」
「うん」
そうしょんぼり言った私にしてきた篤のキスは、アイスのせいで触れた唇が冷たかった。
なんだかんだ優しい篤は、私をうちわであおぎながら「行こうか」と言った。
今日は、夏祭り用の浴衣を買いに行くんだ。
「何色にしようかな。篤も買えば?」
「俺は持ってるからいいよ」
ピンクにしようか、ブルーにしようか、白にしようか。
考えているうちに、私は自然と笑顔になった。
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