プロローグ

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 これまでも盗撮犯を見逃し、掏摸を生業とする者や詐欺の常習犯を協力者にして役立てていた。  ……殺人犯は初めてだな。  熊野御堂がいま必要としているのは頭脳を担当する者だった。知識の絶対量が個人では不足している。  九九が聡明なのは理解できる。こちらの条件を飲めるなら、適しているのではないか? そう考え始めていた。  そこで熊野御堂はこう訊いていた。 「あの。ってご存知ですか?」  それは民話の一つだ。 「昔、ある国のお殿様が、高齢の親を山に捨てるように、というお触れを出しました。けれど、ある息子は親を捨てられず床の下に匿ってしまう。その結果、息子は親の知恵に助けられる。そんな物語なのですが……」  九九が細い指先で唇に触れてから言った。
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