プロローグ

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 熊野御堂はその真上から少し離れた革張りのソファに腰掛けた。ソファの前にはローテーブルが置かれている。  用意していたコーヒーを一口だけ含む。  斜め上から九九を見下ろすような状態でどう話しかけるべきか、熊野御堂は考えていた。  結果、素直に言うことにする。 「相談しても良いでしょうか? 一昨日の夜に起きた事件の事なんですが……」  九九が読んでいた本を閉じ、机の上に置く。  代わりに机の上に置いていた眼鏡を手に取った。九九が眼鏡をかけて椅子をくるりと回転させる。  その行為が九九にとって知性のスイッチだったように、澄んだ表情をしていた。  夜空に浮かぶ三日月でも見上げるように、熊野御堂に視線を送る。そして、一言だけ発して口角を上げた。
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