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「なあ、京介。何であのウェイターが犯人だって確信したんだ?」 街灯の灯る夜の道を道なりに運転しながら上川がバックミラー越しに尋ねると、京介は外の景色をぼんやりと見ながら淡々と答えた。 「ああ、メインディッシュの皿の向きです。形がアシンメトリーだったんですよ。特注なのか俺も初めて見るデザインでしたが、いくつかの特長から、九州の有名な白磁の皿だと判断しました。あの実行犯、それを逆向きに置いてたんです。ハイクラスのホテルのウェイターなら、そんなミス許されませんから」 「成程ねぇ、それは俺の専門外だ」 恐れ入ったと上川が感服した。 「今日は変に疲れました。付け睫重いし。もう女装は懲り懲りです。流石にないと思いますけど」 京介の声は重い。 緊張が解け、女性として振る舞っていた疲労の波が押し寄せたようだ。 「そうか?俺は好きだけどなぁ」 「……女の趣味は悪くないみたいですね」 「言うようになったな、お前」 「恐れ入ります。上司の教育が余りにも素晴らしいもので」 会話は相変わらずだが、二人の表情はそれに反して満足そうだった。 任務、完了。
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