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「元営業の親父に、叩き込まれたんだよ」
「なっ_」
「ののちゃん、偉いね。お父さんの教えを守ってるって事だもんね?」
「愛?オレは_」
「藍も、そう思うでしょ? ののちゃんは、普通に気を遣っただけ。それなのに、何で、そんな顔するの?」
何で? か……。
オレも、同じ顔してるのかな…?
「藍? ののちゃんにも、失礼だし…それに何より、オレの事、信じられない?」
「っ!! んぁあっ!クソッ んな顔すんなよ。オレが悪かった!」
「イチャイチャすんのは、後にしろ。 トーストが、黒焦げになるぞ」
「ののも、早くオムレツ作れよ。 お手並み拝見させてもらうからな」
オレは、そっと立ち上がり、廊下に出ようと、リビングの扉に手を掛けた。
背後からの笑い声に振り向くと、声だけでは感じなかった疎外感が、心の中に生まれた。
なんて、心が狭いんだ。
キッチンで、楽しそうに料理をしている華やかな3人を見てると、オレは、ここにいちゃいけない気がしてくる。
そのくせ、独占欲だけは、強くて…
零治先輩と暮らすようになったら、オレ…どうなるんだろ…
「おっ。レン、起きたのか?」
先輩の顔…まともに見れないよ。
「剣崎、悪ィな。ブランデー、呑まされたんだって? 大丈夫か?」
「ぁ…はい」
「蓮くん、ごめんね。小さじ一杯のつもりが、ドバッと、入っちゃって……。ホント、不器用で…」
「いえ……全然…大丈夫です。ぁ…の…顔、洗ってきます」
「おう」
とりあえず今は、この場を離れたい。
自分が、さらに嫌いになりそうだ。
リビングを出て、廊下を歩き始めた時、
「ちょっと待って」
愛さんに、手首を掴まれた。
「?…はい。ぁ…の…?」
「蓮くんの嘘つき」
……ぇ…?
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