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羽岡はプライドの高い男だ。
だから無言で電話を切ったとしたら、二度とかけてこないかもしれない。
でもまた電話があったら?俺は…
「…くん?浅利くん!」
「ぅわ、はいっ」
パソコン画面には打ちかけの文書。隣には怖い顔をした仁川女史。
「話聞いてた?」
「…え、と」
「もうしっかりしなさいよ。議事録ひとつにいつまでかかってんの」
「すみません」
「無駄に残業しない!さっさと片付けてさっさと帰る!」
仁川は缶コーヒーを丞のデスクに置いた。
「ありがとうございます……あ、勧めてもらったピザ屋行ってきました」
「あら、どうだった?ハチミツのやつ食べた?」
「食べましたけどイマイチでしたよ」
「やだ味覚を疑うわ」
「ははっ」
「…また言えない類のことで悩んでるの?」
悩んでいるのだろうか?
羽岡から電話があったというだけで、なにを悩む必要があるのだろう。
期待をしている?もう一度、恋人に戻れるかもしれないと。
「浅利くんっ!」
バシッと肩をたたかれる。
「わたしを置いて物思いにふけないで」
「すみません…」
「そうだ!また三人でラーメン食べに行く?」
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