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「おれたちがシロに声かけても、やっぱり夏奈には敵わないから」
「誰が言っても一緒だって」
「そんなふうに拗ねるから、シロが気にするんだろ。わかってやれよ。あいつ、この大会好調なんだぞ。守備だってきっちりこなしてるだろ」
知っている。スタンドから、いつも見ていたから。
城崎の捌いたゴロ、フライ。打席に入れば見える、4の背番号。
セカンドに打球が飛ぶだけで体が反応してしまう。
絶対にあり得ないと知っていても、メンバー発表のとき、セカンドのあとに続くのが自分の名前ではないのかと期待してしまう。
簡単なゴロを捌いただけで『ナイスセカンド』の声が応援スタンドからあがる。捕れて当たり前。別にナイスでも何でもないのに。わかっている。応援文句の一つだということくらい。
黒く歪んだ夏奈の嫉妬心は、8番セカンドのレギュラーを褒めることはなかった。
そこにいたのは自分ではなかったのだろうかと思うと、胸が痛んだ。
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