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「いたいた! お二人さん、探したぜ」
「自分らも一緒にお祭り楽しませてもらうわ。……もうえぇですやろ?」
「うむ」
見回りの交代時間になったのか綾芽と海斗さんが合流し、二人は私達親子の関係が少しでも縮まったのを感じ取ったのか、私の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。
せっかく綺麗に結ってもらったのに、やめてほしい。
しかも、なんでコノ人に許可をとる必要があるんだろう?
よく分かんないけど、まぁいいや。
「良かったなぁ、仲直りできて」
「……うん」
綾芽の言葉に、私は背中の帯に挟んでいたうちわで顔を隠した。
「まずはそうだな……金魚すくいでもやるか」
「やる! わたし、やる!!」
「おっ、なら勝負だ」
二ヤッと笑う海斗さん。
そんな海斗さんを見上げる私。
バチバチっと目には見えない電流が私と海斗さんの目の間で光ったかと思えば、同時に目に入っていた金魚すくいの屋台へと走っていた。
「よっしゃ、俺が一番! 親父、網二つ。俺と、あのチビの分」
「あいよ。ほれ、網とカップだ」
「ま、まって」
「……ほらよ。水が入ってるから溢(こぼ)すなよ?」
「わ、わかってる……ありがと」
息が、く、るし……ちょっと、休憩、してからにしよ。
その後、四人でお祭りを回り、はしゃぎすぎてその日の夜、疲れ果ててぐっすりと眠れたことは言うまでもない。
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