プロローグ

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-視界が赤い。 うっすらとしか開かない瞼。その向こう側に映るのは、上下に歩く人の足、走る車。瞳を横に移すと、そこには青く清々しく快晴な空が見える。 不思議な世界。だがそれは、時間の経過と体に伝わる温かでごつごつした感触により答えを知る。体に伝わる熱は、アスファルトによるもの。 それを体に感じるのはつまり、己が地面に横たわっているということだ。 だが、冷静に分析する時間は儚く散っていく。次第に湧き上がる感覚は、熱い。…熱い熱い熱い。ひたすらな、熱。 この熱さは、アスファルトによるものでは、断じてない。体全体が…中身が、焼けるように熱いのだ。 「--!」 誰かが耳元で何かを叫んでいる。だが大声のはずのその声は、度々遠ざかっていくようで、その内容は聞き取れない。 「きゅ--ゃを!-やく!」 「血が--れか--」 耳元以外でも、あちこちで声が上げられている。その内容が聞き取れないのは、騒がしさが重なり合って…というわけではない。 (あれ…これ…) 意識は、ある。あるのだが、それに反して体は動かない。力が入らない。意識も、はっきりとしない。
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