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「ゆふべのみきりを あさかぜ ゆうかぜの ふきはらふことのごく」
くるる、くるると。
社の中の力が回り始めた。
「のこるつみはあらじと はらへたまへきよめたまふことを」
社のはるか上空に、不可視の道が生まれる。
それが、社へと降り、繋がる。
ああ 還るのだ この地より
祈るものの絶えた寂しきこの場所より
感謝を受けて 還っていくのだ
香佑焔は、今や両膝をつき、額を地につけんばかりに平伏していた。
神が通られるーーーそれに顔を挙げていられるほど、強い生き物ではない。
ここに残る力の残滓(ざんし)はあまりに僅か。
それでも、乱され吹き付けるそれに直接晒されれば、人間なぞ正気でいられるはずがない。
その場で打ちのめされるか、徐々に浸透する異質な力に狂うか。
百々の友人の後輩が、そうであるように。
神使まで礼を尽くして送り出す中、百々は微動だにしなかった。
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