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その少し後に、ガコンと缶を投げつける
音がして、バタバタと走り去る足音が
遠ざかっていった。
「あの人達ったら。もう、ひやひやしたわ」
緊張の解けた絢香が幸にを抱き付いてきて、
安堵のため息を吐く。
彼等がなぜあんな話をするに至ったかは
わからない。けれど、二人は見事に黒川を
黙らせたのだ。
「私達、男を見る目があったわね。
彬生があんなに頼もしい人だったなんて、
しらなかったわ」
「そうね。私も」
彼の誠意は本物だ。
大智は決して幸を軽々しく扱ったりは
しなかった。
『幸は僕だけのもの』
彼は幸のことを守ってくれただけでなく、
堂々とそう言ってくれた。
こんなに嬉しいことがあるだろうか。
「やっぱり私、彼のこと好きで良かった。
何度でも彬生にそう言ってあげたいわ。
幸だってそう思うでしょ?」
「もちろんよ。私も……」
はしゃぐ絢香の言葉に幸は気付く。
自分は大智にきちんと気持ちを伝えたことが
あっただろうかと。
恋人になることは受け入れた。
けれど、きちんと気持ちを伝えたかというと……
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