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三
いやだああ、と金切り声がする。
多美子(たみこ)の視線がそちらへ流れる。入口際のテーブル席。さっきも騒いでいた、あの男の子だ。食事を拒否しているのか、それともこの場所に飽きたのか。静かにしなさい、と、父親か親戚か不明な男が厳しい顔で注意をしている。しかし、効果はない。
「あんたが結婚しないのは、彼の家族の存在が不安だからってこと?」
瑠美子(るみこ)が言った。先刻とは違い、瑠美子の注意は逸(そ)れてくれないようだ。
「聞いている。異常な仲良しなんでしょう、あっちの家族?」
誰から、と問う必要はなかった。死んだ母親から聞いているのだろう。異常な、という悪意に満ちた表現でわかる。
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