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床にガラスの破片と麦茶が広がる。
まだ電話に出てもいないのに心臓が早鐘を打ち、手が震える。
グラスの割れる音に驚いて駆けつけてくれた琴乃さんが、代わりに電話に出てくれた。
「もしもし」
「先ほどは失礼しました。藤坂の後輩の渡部と申します。彩さん、ですよね」
「ちょっと待って、彩ちゃんに代わるわ。ほら、彩ちゃん。藤坂さんの会社の方よ」
少し硬い声を放つ琴乃さんに心臓が痛いくらいだけれど、逃げるわけにはいかない。
意を決してスマホを耳に当てた。
「もしもし。奥寺彩です」
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