佐藤①

2/10
454人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
西暦2200年。 とある山奥に、古い小屋があった。 天井に取り付けられた裸の電球は切れかけ、隙間風が容赦なく入り込む。 「改めて確認しよう。」 佐藤は古びた丸椅子に座ると、部屋の中を見渡した。今年で32歳。低く落ち着いた振る舞いは年齢以上の存在感を漂わせている。 中央には大きな正方形の木造机が置かれ、それを取り囲むように6人の人間がいる。 「大気汚染、水質汚染、土壌汚染、オゾン層破壊、温暖化、海面上昇、凍土融解。」 佐藤は淡々と説明を始めながら、シワのついた資料を机の上に置く。これらの問題を裏付ける科学的データがグラフで記されていた。 「西暦2000年を過ぎた辺りで深刻になったものばかりだ。「深刻」と漢字二文字にすれば安易で呆気ないものだが、改善の兆しもなく、指数関数的に加速した被害は根深く広がり、そして俺たちに大きな影響を与えた。」 佐藤は仲間たちに別の資料を見せる。そこに写っていたのは、横長で円柱形の鉄の塊の写真。人間の何十倍もある大きさだ。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!