種まく人

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目覚めると、鎖で繋がれていた。 固くて冷たい椅子に座り、両手両足に鎖が巻きついていた。 一瞬頭が混乱し、力づくで手足を動かそうとするが、ジャリジャリと鎖がすれる音が響くだけでびくともしない。 汚れひとつない、真っ白な壁と床の空間。 ドアがひとつ。窓はない。家具もない。 僕がぽつんとひとりいるだけ。 聞こえる音は、鎖のすれる音。僕の呼吸音。 無味無臭。 「誰か!」 恐ろしくなり声をあげる。 反響して部屋のいたるところにぶつかり、僕のもとにぽんと返ってくる。 これをどうしたらいいのか、考えあぐねていると、 「目覚めたようですね」 静かにドアが開いた。 現れたのは、若い男。 壁と床に同化しそうな白衣を着ている。 漆黒の髪と目が白い空間に対照的に浮かび上がっていて、不気味さを感じさせた。 「…これは、いったい…」 とにかく、説明がほしかった。 「あなたは軍に保護されたのです」 「保護?」 両手両足を鎖で繋がれている状態を保護と言うのか? 「あなたが敵なのか味方なのか、まだわからないので、拘束させていただいております。申し訳ないですね」 男は丁寧な口調で、僕の顔を覗きこんだ。
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