悪魔の女

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悪魔の女

ここは…何処だ…? イリスは、ゆっくりと目を覚ました。目覚めたばかりではっきりとしない視界に薄暗い光が見えた。 「くそっ…動けない…」 両手を動かそうとしたが…ガシャンっ…と金属音と共に腕が止められる。試しに足も動かしてみたが…同じだった。どうやら鎖の付いた枷(かせ)がはめられているようだ。 「目を覚ました…」 女の声が聞こえた。 イリスは、声のする方を見た。薄暗い闇にいる為、姿が見えないが…おそらく悪魔だろう。 「誰だ?…俺をどうするつもりだっ…」 嫌な予感がするイリスはなんとか動いてみるが、クッションの弾力でベッドに張り付けられているのが分かる。変な汗を掻いて、背筋に寒気を感じた。 「お前がリュード様が目をつけた人間ね…」  カツン…カツン…ヒールの音が部屋に響きだす。 同時に蝋燭の火が灯り始め、イリスは明るくなった広い部屋中が見渡せた。 目の前に一人の女がこっちに歩いてくるのが見えた。 黒いドレスを身に纏(まと)い、白い肌の細い身体に綺麗な顔をして人間の姿をしている。 「リュードの手下か?…だったら離せっ…」 しかし、長年の経験からすぐに悪魔だという事が分かる。人間の真似をしても気配だけは消すことが出来ないからだ。 「リュード様を呼び捨てするとは…人間ふぜいが生意気な…」  王の名をイリスが口にすると、女は突然恐ろしい形相で睨み付けた。 「俺は関係ないから…帰してくれっ…」 イリスは状況が悪いほうへ傾いている事に気づいた。早く逃げ出そうとしたが、手足を四方に縛り付けられている為、動くことが出来ない。 「最近、あの方が私の処へ来なくなったのよ…それまでは来て下さったのに…どうやら人間に興味が湧いて通ってるみたい…」  女は細い腕を組み、イリスの方へ近づき始める。 カツン…カツン…とヒールの音が部屋に響く。 「そんなことしるかっ…」イリスは否定しているが、女の言うことは合っている。リュードは自分の目の前に頻繁に現れているのだから仕方ない…
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