再会

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# 「ん、来たみたいね」 「そっか……ん、ぐふぅっ!?」 天城の端末に電話がかかってきてからおよそ四十分が経とうかといったところで、不意に喫茶店の入り口に取り付けられた鳴り子がカランコロンと音を立て、天城が真っ先に入り口の方へと目を向ける。 入ってきた人物を確認して呟いた天城のその言葉を受けて、食後に頼みサービスで出してもらった動物型のクッキーをお供に楽しんでいたコーヒーを慌てて片付け、俺達も入り口の方へ視線を向けると、彼女のマネージャーだという人物を見た瞬間、俺はそんな奇妙な声を出して盛大にむせ返っていた。 「遅れてごめんなさい! 思いの外警備の打ち合わせが長引いちゃって……って、あら?」 入店し、変装した天城を見つけるやぱたぱたと駆け寄ってきたマネージャーなる人物は、すらりと伸びた長身をぴっしりとした黒のスーツに包み、首から身分証と思しきカードを下げた細身の≪男性≫で、まずはやけに艶のある声で遅刻の非礼を詫びると、そこで相手が俺達であることに気づいたのか、驚いたように目を一瞬見開き、「んまぁっ!」と声を上げた。 「ライト君とルナじゃない!」 「ま、マリアさん!?」 清潔感のある真っ白なワイシャツの上にしっかりとスーツを着込み、深い藍色のネクタイを締めたいかにも「デキるサラリーマン」然とした男性。 こことは違う世界で最高峰の鍛冶職人でありながら鞭という扱いの難しい武器を手足のように操る、≪マリア≫と名乗る男性は、呆然とする俺達を他所に「知り合いなの?」と尋ねる天城と二、三言葉を交わしてから彼女の隣の席の椅子を引いて、そこに腰を下ろした。
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