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一歩外に出ると、随分涼しくなった夜風がビルの隙間を通って吹きつける。
風に巻き上げられた髪の毛を耳に掛けながら空を見上げた。
もう9月も終わろうとしている。
今年の夏は、夏らしい事を何もやれなかった。
社会人になってからは、どんどん季節感が薄れていく。
それを寂しいと思う私は、まだ子供なのだろうか。
駅に向かって少し歩き始めた頃、少し大きな後ろ姿を見つけた。
竹内くんだ。
声を掛けようかやめようか散々悩んで、結局私は後者を選んだ。
あれから2週間。
あの夜、竹内くんに言いたい事を言った挙句、ちゃんとお礼も言わずに帰ってしまった事を私は少し後悔していた。
会社では毎日顔を合わせるものの、なかなか2人きりになる事はない。
最近ではむしろ、避けられているのかもしれないとさえ感じるようになった。
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