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…て、ちょっと待ちなさいよ。
一瞬間を置いてからレンゲで佐竹の鼻頭をペチンと叩く。
「痛っ!」
「あ、あんたね!いきなり何を…」
鼻を抑えた佐竹が若干涙目で私をチラリと見た。
「別にいきなりってわけじゃないよ?
俺と食べる時もよくこの柱の影の席に座るでしょ?その度に狙ってはいたから。」
私とラーメン食べる時そんな事を目論んでたの?
そういや、私、初めてキスしたんだ。
まあ…この歳でファーストキス云々も無い気がするけど。
佐竹の言動に頭の中の整理があまりうまくつかない。
落ち着こうとチャーシューメンに目を落とした。
半分浸かりかけたチャーシューがやっぱり艶やかな色香を放っている。
…とりあえず食べようか、チャーシューメン。
鼓動が早いまま、再び麺を啜り出す。
少しのび始めた麺は醤油ベースのスープを吸い込んで味がより濃厚になっていて、それもまた美味しい。
「チャーシューメン我慢しないで痩せる方法ないのかな…」
ふと呟いた言葉に佐竹が再び私に向かって身を乗り出した。
「食事を減らさないで運動すれば?一駅分歩くとか軽いのから始めてさ。俺、一緒に歩きますよ?」
「いや…でもそこを佐竹に迷惑かけるのもどうかと。」
「もちろん協力するからには条件があるよ?俺の彼女になること。」
頬張ったチャーシューをほっぺたに入れたまま佐竹を見たら、眉を下げて苦笑いをされた。
「あー…もう。」
佐竹の指が伸びて来て頬に触れる。
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