恋するダイエッター

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物心をついた時から若干太めだった。 「ぽっちゃりしていて可愛いわね」と形容されるのは幼少の頃だけ。 年頃になれば皆、手足がスラリと伸びて腰にくびれのある子を『可愛い』と形容するわけで。 そうなりたいとダイエットを試みなかったわけではないけれど、食欲旺盛で運動もあまり得意な方ではない為に長続きはしない。 食べたいものを我慢した結果、『ダイエットなんてもうやめてやる!』と反動が来てより沢山食べてしまって余計に太ると言う悪循環。 結局、『ぽっちゃり』と言う形容をひっさげたまま、気が付けば余裕で彼氏居ない暦二十数年を更新していた。 そんな私も25歳になり、会社の異動で二度目に配属された部署の田井中課長に恋をした。 社内でも『仕事が出来る』と評判の上司。 そこそこ長身(調べによると178cm)の引き締まった体つきでブランドスーツをサラッと着こなし、誰にでも笑顔で人当たりが良い。 「既製服よりもゆったりめに作られているので一つ下のサイズを指定して下さい」と新人研修で説明を受けたにも関わらず、13号の会社の制服がパツパツな私にも「武田と居ると和むな」なんて笑顔で話す。間違っても「どけよ、デブ」なんて言葉は出て来ない。 皆に人気者で信頼も厚い田井中課長とお付き合いするなんて、高嶺の花も良い所なのは百も承知だったけれど、恋する気持ちは止められない。 「俺はスレンダーって言うより、少し肉付きが良い方が好きかも…ってごめん!セクハラだな、この発言は!」 課の飲み会で陽気に酔いながら笑う田井中さんに、一念発起した。 ダイエットして綺麗になって田井中さんに告白するんだ! 斯くして、数十回目となるダイエットが始まった。
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