第三章 「 逆光の写真 」

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バイクから降り立ったのは、まったくの別人だった。 どうみてもゆうより若い・・・ 「ゆう・・・じゃない、こ、こんにちは。」 「こんにちは。 もしかして、レイジさん、ですか?」 その男の手には、手紙の束が握られていた。 「あ、はい。 もしかしてその手紙・・・」 男はにっこりと笑うと言った。 「神楽川 夕は、俺の叔父なんです。 俺、今度叔父に頼まれてここで喫茶店やることになりました。 神楽川 信 (しん)と言います。 よろしくお願いします。」 レイジはぽかーんと開いた口をあわてて閉じると、何度もうなずいた。 「叔父って、叔父さんってことは、甥っこ?? それで、ゆうさんは?今どうしてるんですか?」 「中に入りませんか、外、寒いでしょ。」 ちりりん・・・ 信は、夕の代わりに店を引き継いだ。 夕は元々やりたいことがあって、喫茶店で貯めた貯金で、今は 海外にいるのだという。 信は言わなかったが、レイジはそれが嘘だと感じていた。 ・・・ゆうさんはそんな風に出て行く人じゃない・・・ 何か、きっと言えない理由が出来たんだ・・・ だが、信は何も知らないと言った。 店にはまた活気が戻った。 レイジはその後も時々、ゆうのことを話した。 信はにこにこと話を聞いていた。 お客はもう新しいマスターに慣れたようだった。 さすがに甥だけあって、よく似てるよと皆が信に言った。 顔は似てはいないが何故か雰囲気が似ている・・・ レイジもそう感じていた。 「手紙、預かっていますよ。 はい、これ・・・」 ある暑い夏の午後、信からゆうの手紙を受け取ったのだった。
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