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バイクから降り立ったのは、まったくの別人だった。
どうみてもゆうより若い・・・
「ゆう・・・じゃない、こ、こんにちは。」
「こんにちは。
もしかして、レイジさん、ですか?」
その男の手には、手紙の束が握られていた。
「あ、はい。
もしかしてその手紙・・・」
男はにっこりと笑うと言った。
「神楽川 夕は、俺の叔父なんです。
俺、今度叔父に頼まれてここで喫茶店やることになりました。
神楽川 信 (しん)と言います。
よろしくお願いします。」
レイジはぽかーんと開いた口をあわてて閉じると、何度もうなずいた。
「叔父って、叔父さんってことは、甥っこ??
それで、ゆうさんは?今どうしてるんですか?」
「中に入りませんか、外、寒いでしょ。」
ちりりん・・・
信は、夕の代わりに店を引き継いだ。
夕は元々やりたいことがあって、喫茶店で貯めた貯金で、今は
海外にいるのだという。
信は言わなかったが、レイジはそれが嘘だと感じていた。
・・・ゆうさんはそんな風に出て行く人じゃない・・・
何か、きっと言えない理由が出来たんだ・・・
だが、信は何も知らないと言った。
店にはまた活気が戻った。
レイジはその後も時々、ゆうのことを話した。
信はにこにこと話を聞いていた。
お客はもう新しいマスターに慣れたようだった。
さすがに甥だけあって、よく似てるよと皆が信に言った。
顔は似てはいないが何故か雰囲気が似ている・・・
レイジもそう感じていた。
「手紙、預かっていますよ。
はい、これ・・・」
ある暑い夏の午後、信からゆうの手紙を受け取ったのだった。
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