月見団子

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「余計な心配かけてごめんよ?でも大丈夫」 神楽は既に鬼を倒し終えて、最後に全員で舞いを披露してる所だった。 元の場所ではなくお婆さんの家族が見つけやすいように目につく位置に座らせ、最後の舞いを観賞していた。 神社に来て浄化されたのか、モヤモヤしていた気持ちがスッキリと晴れた気分になる。 後は墓参りして帰ろうと考えていると、お婆さんは私の腕を使って立ち上がり、録画を止めてくると言い出した。 「ついて行きましょうか?」 「もう大丈夫、お礼に今度団子でもこしらえて持って行くからね」 「はぁ…有難うございます」 建前なのは分かっていても、ここは合わせておく方が差し障りない。 「私はハツ。そんないい子の山金犬を見せてくれて有難う」 振り返る事なく歩くお婆さんに、茫然と立ち尽くしていた。 「あっ居た、何処まで買いに行ってたの!?」 瑠里達に声をかけられ、ハッとして辺りを見たがお婆さんの姿はもうなかった。 墓参りを済ませると母は二日連続神楽で満足したのか帰りの車内ではご機嫌だった。 いいネタになると思い、先程のお婆さんの話をすると母達も案の定飛びついて来た。 「凄いねそれ、私は部分入れ歯だからそんなの絶対無理!しかも大なんて安定剤つけても難しいよ」 「あれじゃない?妖怪りんご飴、各所の祭りに出没し、神楽を録画してりんご飴をゴリゴリ食らうという…」 「いねーよ!そんな妖怪」 お揚げで満腹のイナリは眠っていたが、妖怪ネタを引っ張り三人の話はずっと盛り上がっていた。 次の日からは自動車学校に通いつめ、妹はたまに一人でトレーニングに行き、有意義な時間を過ごせた。 仕事も普通にこなし啄ともいつもの調子に戻りギクシャクした所もない。 段ボール三つ分のチーズたらも届けられイナリもきっとご機嫌な筈だ。 次の出勤は四日後だが、その間に最後の筆記試験を免許センターまで受けに行く予定にしている。 試験後に妹が街で落ちあおうと言ってきたが、提案の理由は勿論『忍者探偵X』を観たいからだ。 待ってもキリがないと諦めた妹は、試験の日のついでに街に出ようと思いついたらしい。
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