青りんご味のグミ

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青りんご味のグミ

「――怖いですか?」 「はい、顔も含め全部」 「ふふっ、百合さんがそう思うから感じるんですよ。見た目も大事ですが、心の目を養わないといけないようですね」 そう言われても狐はウチの社長のように、目が細くてコンと鳴くとガチガチのイメージしかない。 昔話には出そうもない妖怪みたいな顔つきの、リアルな狐を見るとそれだけで逃げ出したくなる。 「あなたのは……後光のように美しく人を集めるいい物で、まだ光になりきれてない色も沢山ある。こんな人間に会ったのは初めてですよ」 「光?オーラみたいなものですか?」 「さてね、あなたの特別な光に吸い寄せられる者も沢山いるでしょう」 そう言われてもロクな奴らと関わってないし、良かった事と言えばイザリ屋で働いて貧乏暮らしから脱っした位だ。 「あの……私イナリの事が気になるし、朧もここから出た方がいいかと。イザリ屋に依頼が入ったのなら後は蓮さん達に任せればいいですし」 「百合さんが出たいならお供しましょう。見ての通り命を奪われる心配はありませんし、まだやり残している事もありますので」 縄を解いてもらうとすぐに双棒を手に取り、先程朧が倒した犬人間を灰にしておいた。 蓮さんの縄を解き、脱出の準備が整ったところで不気味な鳴き声が響いた。 「フゥゥ……クルクルゥーー!」 「何あれ!?何の鳴き声?」 「さぁ?よく分かりませんが、とりあえずここから出ましょう」 ライトを照らし、石畳みの道を進むと階段が見えたのでそっと上がって行く。 上部に柵があったが蓮さんが弾き飛ばしてくれ、走り出すと大きな庭が見えた。 「ここ……凱の別荘じゃん!」 建物が広すぎて何処に行けばイナリ達に会えるのか全く分からないが、珂屡は何方かと戦っている筈なのですぐにでも向かいたい。 「イザリ屋の応援はもう来てるの?誰かと連絡取れない?」 蓮さんはスマホを覗くが反応はないようで、使えない奴と睨んでいると朧が代わりに答えた。 「百合さんは気配を探れませんか?」 いつものように直感で動いた方が見つかるかもしれないと朧の助言を聞くと、すぐに何かを察知し自然と城の左側に向かって走り出していた。
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