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僕はくるりとUターンすると、東屋に向かって大股で歩き始めた。
まだ、いますように。帰っていませんように。知らず知らずのうちに胸の中でそう唱えながら、来た道を戻る。
そうして、征治さんが腰かけたまま膝の間で手を組み、じっと地面を見つめながら考え込んでいる姿を見つけてホッとした。
僕は東屋に飛び込み、傘をたたみもせずに放りだした。
驚いた顔をして僕を見上げている征治さんに、カバンから取り出すのももどかしく、タブレットを突きつける。
僕はベンチに座って一気にキーボードを叩いた。
『わからないことだらけです。
なんで勝君は失踪したんですか?
なんで征治さんは、名字が松平になっているんですか?
旦那様の会社と全く関係のない業界で働いているのはなぜですか?
勝君と旦那様は今どうしているんですか?
なんで、今更征治さんは僕に謝りに来たんですか?
吉沢さんは、どこまで知っているんですか?
説明してもらわないと、勝君や旦那様に会って謝罪なんて聞けません』
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