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「なるほど。
絶景だな」
晴比古は露天風呂から眼下に広がる緑を見た。
「……なにもない」
「なにもないのがいいんじゃないですかー。
と、街から来た人には言ってるんですけどね」
と菜切は新田同様、苦笑いしている。
「僕は見慣れちゃってますけど」
「菜切は知らないのか?
幕田のばあさんが言ってた殺人事件」
すると、幕田が周囲を気にしながら、何故か小声で言ってくる。
「晴比古先生、ばあさんっておばあちゃん自分では言ってるけど、人に言われたら機嫌悪くなりますよ」
此処、男湯じゃないか。
ばあさんが聞いてるはずない、と思ったのだが。
構わず、その辺からひょいと現れそうだな、あのばあさん――。
「……ハルさんが言ってた事件」
と言い直す。
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