第二章 昔の事件

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  「なるほど。  絶景だな」  晴比古は露天風呂から眼下に広がる緑を見た。 「……なにもない」 「なにもないのがいいんじゃないですかー。  と、街から来た人には言ってるんですけどね」 と菜切は新田同様、苦笑いしている。 「僕は見慣れちゃってますけど」 「菜切は知らないのか?  幕田のばあさんが言ってた殺人事件」  すると、幕田が周囲を気にしながら、何故か小声で言ってくる。 「晴比古先生、ばあさんっておばあちゃん自分では言ってるけど、人に言われたら機嫌悪くなりますよ」  此処、男湯じゃないか。  ばあさんが聞いてるはずない、と思ったのだが。  構わず、その辺からひょいと現れそうだな、あのばあさん――。 「……ハルさんが言ってた事件」 と言い直す。
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