第二章 昔の事件

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 だが、志貴はそんな嫌味混じりの冷やかしにも動じることなく、晴比古に訊いていた。 「先生は、今の仏像の話と今朝の支配人失踪事件は関係あると思われますか?」  さすがこういうときは、刑事らしいなと、ちょっとうっとりその横顔を見てしまう。  晴比古が、 「まあ、あるんじゃないか?  今のこのタイミングでって言うのがな。  なんの意味があるのかは知らないが」 と言うと、 「そうですか」 と志貴は微笑む。 「僕、この犯人捕まえますよ」  何故か、笑ったまま、わざわざそんなことを宣言してくる。  いや、そりゃ、犯人は捕まえるべきだろう、と思っていると、 「僕と深鈴の邪魔をするなんて。  殺していいですよね?」 と言ってきた。  やはり、キスの時間が短かったことを怒っているらしい。 「殺していいですよね?」 と志貴は笑顔のまま繰り返す。  ……新田たちが居なくてよかった、と思っていた。
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