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プロローグ
ここは都内でも有数のお嬢様学校、セント・クルセイダース女学園、高等部――今は春休みで生徒は通学していないが、そのヘリポートに今まさに一人の女子高生が友人らしきクラスメートに見送られながら、自家用ヘリに乗り込むところだった。
なんせ、通うのは一流企業や大物代議士の令嬢ばかり、誘拐対策に自家用ヘリで送り迎えやボディガードと一緒に防弾ガラスのベンツで通学するのは珍しくない。
見送りに来ていた生徒の一人が、「残念ですわ、ロシアから帰ったと思ったら、また用事ができたなんて」と、名残惜しそうだ。
すると、その少女は「しかたないんです。それでは皆さん、ごきげんよう、またお茶に誘ってください」
と、ほほ笑んだ。
やや関西訛りがある。
十六歳の少女で、身長は百六十五センチ、すらりとした体型で、髪型はおかっぱ、顔はやや浅黒いが、これは趣味でサーフィンをしているからだ。
某貿易企業の令嬢で、休日には江の島、ハワイ、カルフォルニアなどでサーフボードを片手に世界選手権に出場するので知られたスポーツウーマンで、クラスでも人気があった。
社交的な性格で、誰にでも明るく話しかける。
成績も悪くなく、中の上といったところ。
ただクラブ活動はしていない。
放課後になると、さっさと帰宅してしまう。
どうも家庭の方針で、世間から隔離しておきたい事情があるらしかった。
その理由は学園ではだれも知らない。
どうも両親とは十歳で死別しているらしく、そんなところも関係しているのだろうという噂だ。
知っているのは学園長くらいなものだが、それはトップシークレットになっていた。
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