370人が本棚に入れています
本棚に追加
/445ページ
よくよく考えれば蓮様は僕以上に笑顔を作る必要がない。多分笑顔を作るのは初めてだろう。普段笑うことはあってもわざわざ可笑しくもないのに笑う機会はまずない。
「ん~じゃあ出来るだけの笑顔に……いや、ごめんなさい。やっぱり無表情で構いません。すいません。」
全力の笑顔だったが全くダメだったらしい。でしょうね。
ということで、無表情のまま数枚撮った。
しばらく庭に出ていると、物珍しさからか普段から餌付けをしている小鳥たちが近寄ってきた。
そして一羽のエナガが飛んできて、
モフーン
「「「…………。」」」
蓮様の頭にそのまま着地した。
いつの間にやら蓮様はそのエナガに相当懐かれたらしく、蓮様の白い頭に座った。
蓮様のふわふわとしたくせっ毛に埋もれるふわふわで丸っこいエナガ。
超可愛い。
蓮様も頭に何か鳥らしきものが乗ったことに気づいたようでしきりに頭上を気にしているが、下手に動くと飛んで行ってしまうため無言でソワソワしている。
顔を赤くしながら嬉しそうにしている蓮様を見て勝手に癒される。
逃がしてしまうのも悪いので僕とさよさんも黙り込む。
ーーケキョ、ケキョ……
「あっ!」
姿の見えないどこかでウグイスが鳴いた。それで蓮様は思わず頭を動かしてしまった。驚いたエナガはパタパタと屋根の上に飛んで行ってしまった。
「あー……。」
残念そうに鳥のあとを目で追い、自分の頭を抑えた。
「いつの間にそんなに懐いたんですか?」
「さぁ?頭に留まったのは初めてだった。」
嬉しそうに頭を触る。
「また来ると良いですね。」
「ああ!」
自然と二人とも笑っていたことに気付く。無理に笑うよりやっぱりこっちの方がずっと良い。
最初のコメントを投稿しよう!