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俺の最高に恥ずかしい暴露話は、三崎を相当驚かせてしまったようで。
彼女はしばらく動かなかった。
ホッと安堵の溜め息をつき、三崎はまた少し膨れて俺を見上げる。
「そんなこともあったから、竹下さんのこと、ずっと勘違いしてたの。柴垣くんは否定しなかったって聞いてたし」
確かに三崎が俺の気持ちを微塵もわかっていなくて。
ましてや情事の後に女を置き去りにするとんでもねぇ男だと思っていたとしたら。
思われていたとしたならば……。
その勘違いも理解できない事はない。
けれどこの噂に関しては信じちゃダメだろ……。
「確かに否定はしてないけど、肯定もしてないよ。肯定する要素は何一つなかったからな」
俺も耳にした身に覚えのない竹下との噂話。
これについて事実である出来事なんて、全くないから。
「あの頃の竹下は、三崎のこと異常に敵視してただろ。パターン来なかったり納期知らされてなかったりがあったし。それもこれも全部、おれに執着しているせいだった。だから否定も肯定もしないに限ると思ったんだよ」
「そうだったんだ…」
三崎にとっても竹下にとっても、俺のこの守り方自体が間違っていたことは、今だからわかることで。
あの時の俺は本当にこれが最善の策だと思っていたんだ。
「津田さんならお前をもっと確実に守れたんだろうけど」
「私は津田さんに甘えて守ってもらおうなんて思ってなかったよ」
「わかってる。だから竹下の自由にさせて波風立てないように口を噤んでた。そのうちお前がちゃんと自分でケリつけると信じてたしな」
「柴垣くんが勇気をくれたからだよ」
そう言って笑ってくれた三崎に、心が軽くなるのを感じた。
「頑張ってくれてよかった。竹下との話、詳しい事は省いてもいいか?」
「もちろんだよ」
本当は話さなければならない事だと、きっとお互い分かっているだろう。
それでも今この場で言いたくないのは、せっかく変わり始めた竹下の過去の脅迫じみた言葉を、三崎に伝えることが憚られたからだ。
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