第1章 出会い

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その奇妙な店は、何かが溢れ出していた。 鈍感な私にもわかるほどに...。 お店の入り口。 木枠に囲まれたガラスのドアの向こうから、2人の男女の影が揺らめいている。 ドアを引こうとノブに手をかけた時、ガラス越しに見えたのは、男女が唇を重ねようとする光景。思わずノブを引くのをやめて目を凝らす。 このお店からダダ漏れしている妖艶な雰囲気に、ここへ来たことを少しだけ後悔した。 けれど、お店に予約をしてしまった私は後には引けず、思いきってそのドアを引く。 案の定、ガラスがなくなれば、目を凝らさなくてもその光景は嫌でも目に入ってくるわけで。唇だけではなく寄せ合う体も鮮明に映る。 何も入り口ではなく、もう少し店の奥でやればいいのに。ようやくこのお店にたどり着いた人でも、中に入るのを迷ってしまうのではないかと思う。 例えここが、運命の人に出会えるお店だったとしても。
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