心の店

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その奇妙な店は、ネット上で都市伝説として語られていた。 彼女を病気で亡くしてから数週間。俺は未だに彼女の死を忘れられない。 そんな中、俺は何故か裏通りの怪しい店の前にいた。 「どこ、ここ?」 勿論、俺は知らないし、何よりこんな看板も無い怪しい店なんか入ろうともしない。 けど、なんだろう?この妙な安心感。 その安心感は、俺をその怪しい店へと誘った。 「いらっしゃいませ」 店に入ると、煙管をくわえた店長らしき人物が出迎える。 「当店は、心に穴の空いている方に、奇跡をお売りしています」 「奇跡…ですか?」 「はい、しかも無料で」 「…」 まだ信用できないが、無料なら。 そう思った俺は、騙されたと思って一つ買っていくことにした。 「それじゃ…一つ」 「かしこまりました。願いは言わなくて結構です」 気づいたときには、もう店の外だった。 「ここって!」 さっきまでいた裏通りから、彼女と出会った土手にいた。 ケータイのコールが鳴る。 「?」 誰だと思いながらケータイを開く。 なんと、病死した彼女からのメッセージだった。 俺はそのメッセージを再生する。 「拓真?私だよ。ごめんね、拓真とそんなに長く居られなくて。でも…それでも私のこと愛してくれる人がいるだけで幸せなんだ。だから悲しまないで。最後に、さよならは言いません。拓真とは、また会えるからです…愛してくれてありがとう」 本当に、奇跡だ。 瞬間、涙が溢れた。 「人は理屈より、奇跡に弱いものです」 煙管の店長が言った。 結局、この店は何だったのだろうか?
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