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「……っ」
私は“違う”って、ちゃんと言いたかった。
でも、口を開けるも声が出てこず、歩かされながらも先輩とお母さんを何度も視線で往復するしかできない。
「……“いい子”って、親に都合の“いい子”ってことですか? 口答えしない子ってことですか?」
「……」
ボソリと呟かれた声。
でも私に聞こえたくらいだから、お母さんにもきっと聞こえていたはずだ。
言われてから数歩進んだ後で、お母さんは足を止めて振り返り、
「なんですか?」
と聞いた。
「いえ。お気をつけて」
そう言った先輩を見ると、彼はいつもの飄々としたような顔で目を細めながら微笑み、首を微かに傾けていた。
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