仮想世界の箱庭へ②

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『そのゲームは試作品だけあってバグだらけだ!』 「あれはこういうことかああああああ!」 「ど、どうしたのセツナ! 落ち着いて! 悩みがあるなら僕が相談に乗るから!」 「寄るなケント! 今の俺は、穢れている……ッ!」 「どうしたのセツナ、本当にどうしたのさ! 元に戻ってよ!」 「はっ!」  ケントの必死の呼びかけでセツナは正気を取り戻した。 「な、なんて恐ろしいバグだ……これは俺を(社会的に)抹殺するトラップと言っても過言じゃないぜ……」 「えっと……正気に戻ったなら何よりだよ。それでセツナ、僕にもアイテムの見方を教えてもらってもいい?」 「ああ、大丈夫だーーただ、覚悟しとけよ。何が起こってもいいように」 「一体セツナは何に対してそんなに怯えているの……?」  真剣そのものの表情で忠告してくるセツナにケントは困惑を隠しきれない。  そんなケントにメニューウインドウ操作のレクチャーをしながら、セツナは考える。 (まさかあんな恐ろしいバグがあるとは思わなかった……ま、まあこんなことはそうそうないだろうけどな。まさかまだ変なバグがあるなんてことはーー) 「わあああああお師様、見ないでください! 今の私を見ないでください!」 「は、はあ? いきなり何言ってんだお前。それよりお前のアイテム欄には何があったのかって話を」 「ありません! 十八歳以上しか持っていてはいけない男性同士の恋愛が描かれた薄い本なんて、私一冊も持ってません!」 「おいバカ弟子今なんつった」 (ーーあるな。まだバグあるぞこれ確実に)  セツナたちから少し離れた場所では、ミアが半泣きでシグレから距離を取っている。シグレは疑問顔だったが、セツナにはわかる。ミアは自分と似たような被害に遭っていると。  もしかしたら、このゲームはかなりおかしなことになっているんじゃないだろうか。  セツナは自分の懐に眠る爆弾(※メイド服)のことを考えながら嫌な予感を感じていた。
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