第1章

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いつ渡されたものか、 あるいは彼女の両親がくれたものだったのか、 記憶はなかったけれど。 「……バーベナー、 か」 彼女の手で書かれた文字を読む。 いつも彼女の枕元にあったこの花の名前さえ、 自分は知らなか った。 種を蒔いてみようかと、 思った。 「この本の取り寄せは出来ますか?」 次に彼と言葉を交わしたのは、 その店に通うようになって――といっても週に1、 2度程度の事だが――半年ぐらいたった頃。 夜勤明けの足で書店に向かった。 書名と発行所を書いたメモを、 彼に手渡す。 レジ脇のパソコンで検索をかけた彼が、 在庫は切れていると答えた。
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