3人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
いつ渡されたものか、
あるいは彼女の両親がくれたものだったのか、
記憶はなかったけれど。
「……バーベナー、
か」
彼女の手で書かれた文字を読む。
いつも彼女の枕元にあったこの花の名前さえ、
自分は知らなか った。
種を蒔いてみようかと、
思った。
「この本の取り寄せは出来ますか?」
次に彼と言葉を交わしたのは、
その店に通うようになって――といっても週に1、
2度程度の事だが――半年ぐらいたった頃。
夜勤明けの足で書店に向かった。
書名と発行所を書いたメモを、
彼に手渡す。
レジ脇のパソコンで検索をかけた彼が、
在庫は切れていると答えた。
最初のコメントを投稿しよう!