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ゴールデンウィーク明けの月曜の朝、教室に入ると相変わらず曇り空な俺の心の中とは裏腹に、みんな何だか浮き立った雰囲気で騒がしかった。
「あ、純也!」
俺が席に着くと明るい声が耳に入って、後ろの席の和樹が俺の肩を掴んだ。
「おまえさ、C組の田辺玲香に告られたって本当?」
いつの間にかそんな噂にまでなっているのか。俺は何も言わずに椅子に座った。
「ずっりぃな。あんな可愛い子に好かれるなんて」
俺の反応を見て、和樹は噂が本当だと思ったようだ。
「で、OKしたのか?」
和樹が興味津々に俺の顔を見たけど、俺はそれには反応せずに、もう存在しない窓側の一番後ろの席の辺りをぼんやりと見た。
こんな時、悠太はやっぱり茶化していただろう。ニヤニヤと笑いながら……。
「おはよう、篠崎君」と絵里菜が隣の席で機嫌が良さそうに笑った。
「ねえねえ、これ見て」
絵里菜が嬉しそうに携帯を出して、ガラス細工のイルカのストラップを見せた。
「昨日ね、時男先輩と水族館に行って買ってもらったの。ペアなんだよ」
「そりゃ、良かったな」
俺は適当に相槌を打った。
絵里菜はあれから悠太の話をしない。悠太と一緒に七不思議のことを調べたことも、チエミのことも、悠太と一緒にいた頃のことは一切話しをしていない。もう吹っ切ったのか、忘れようとしているのかは分からないけど……。
悠太という共通の友達がいなくなったから、多分この席が替わったら絵里菜ともあまり話さなくなるだろう。それは簡単に予想がついた。
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