第1章

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ははっ。本当に川原さんが死んだなんて信じられませんよ。あなたは信じられますか? 当然ですよね。だって川原さんを刺したのは貴方ですもんね。刺した理由はなんでしたっけ? 貴方の奥さんの浮気相手が川原さんだと思ったでしたっけ? お前はアホか。あの馬鹿川原が浮気なんて器用な真似できるかよ。ホテル街から出てきたところを見た? あそこは飲み屋街でもあるだろうが。そもそもお前の嫁の他にも後輩が何人もいただろう? それをお前はよくも調べもせずに勝手に決めつけて刺したんだろう? 違うのか? 答えろよ。黙秘? この部屋に黙秘権なんてあると思うなよ。3秒以内に答えろ3.2.1・0 。  バキッ。 痛いか? ただ指を折っただけだよ。死にはしないから心配しないでくださいよ。まだ指は残っているんだから? え? 5本全部折れてるって。あるだろ。左手にまだ5本。ああ、そんな絶望的な顔しないでくださいよ。別にあなたの絶望や、苦痛に歪む顔が見たいわけじゃないんですよ。ただ、これは私がすっきりしたいだけの復讐なんですから。大丈夫ですよ。警察には連絡してありますから。私の復讐であなたが先に死ぬか警察があなたを助けに来るのが先か勝負しましょう。私は別にどっちでもいいですよ。どうせ、あなたはここで死ぬか警察に捕まって社会的に死ぬかのどちらかなんですから。 ああ、だから別にそんな顔しないでくださいよ。別に私は貴方に恨みがあるわけじゃないんです。ただ、理不尽に死んだ川原さんの気持ちをあなたにも知ってもらいたいだけですから。 あ、なんなら今の気持ちを私に教えてくれてもいいですよ? そうしたら川原さんが死んだ時の気持ちが分かるかもしれませんし。元部下として上司の気持ちを知ってあげたいんです。 でも、川原さんは馬鹿だから自分が死にそうな時も道が汚れる。怒られたらどうしようとか考えてそうですね。 本当に馬鹿。
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