8.

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3人が談笑しながら乾杯する姿を、賢吾は少しばかり驚きながらもうれしそうに見やる。 賢吾と話していた久須見も透たちを見て安心し、賢吾に視線を向け、その整った容姿に改めて目を見張る。 しかも、透たちを眺めながら微笑む表情はひどくやわらかく、初めて見たときの笑顔とは全然違うと思った。 あの時はきれいな微笑で威嚇されているようだと感じたのだ。 「滝田さんは・・・・あの、女性にモテますよね?」 もはや社交辞令のようにかけられる言葉を、賢吾は微笑でいなす。 「・・・・そうでもないですよ、出会う機会もありませんし。ところで、滝田さんはやめてください。3つも年下なんで」 「え? 本当に? 全然見えないです」 「丁寧語もやめてくださいね」 久須見はうっと言葉に詰まる。 「・・・・じゃ、あの、滝田くん・・・・」 久須見は賢吾に尋ねたいことがあったが、初対面でそれを尋くのは失礼な気がして言いよどむ。 「なんでもどうぞ」 賢吾はにっこりと微笑む。 こういう時の賢吾の微笑の効果はてきめんで、久須見も思い切って口を開く。 「じゃ、あの、わとちゃんが・・・・滝田くんは女性が恋愛対象だって言ってたから、その、滝田くんすごくモテそうだし、浮気の可能性があると嫌だなと思いまして・・・・あ、思って・・・・」 言葉を選びながら誠実に話そうとする久須見に、賢吾は好印象を持つ。 「浮気されると嫌だなと思われるんですね」 「すみません、初対面でぶしつけなこと・・・・」 「いいえ。透のことを心配してもらえてありがたいです」 賢吾はやさしく微笑んで久須見を安心させてから、話を続ける。 「・・・・オレ、対等な友だちってあの二人しかいないんです。意外に思われるかもしれませんが、この外見がトラブルを生むことも何度かあったので、オレにとっては外見を気に入られることは面倒でしかなかった。でも、透は、気に入ってくれているみたいで・・・・オレはそれがとてもうれしいんです」 賢吾はほっと息をついて、水割りが入ったグラスを口に運ぶ。
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