先輩になりました。

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四月一日。 今日で新年度を迎えた。 わたしは都内で働く営業ガールだ。 去年は右も左もわからない新人で、おっちょこちょいな性格が災いして、 上司との待ち合わせに遅刻するわ、 資料を忘れるわ、 取引先の場所に迷うわで、 会社にずいぶんと迷惑をかけた。給料泥棒ともいわれた。 悔しい! だから、今年の抱負は『後輩に抜かれないこと』だ! 頑張るぞ、わたし! 「えー、今日から新年度です。営業部第二課に、君たちの後輩がやってきました。では、みんな、自己紹介をお願いします」髪が寂しい課長がめんどくさそうにいった。 おーい、やる気出せよ、威厳を保てよ。 そんなことを口に出す勇気はない。私も先輩たちに交じり、初々しさが残る後輩たちのカミカミな自己紹介を聞く。 たいした奴はいないな、フン。 私のような童顔女子に、ラグビーをやっていましたという坊主頭の体育会系、世間を知らなそうな好青年の三人だ。これなら私よりも上にくることはない。しかも、童顔ちゃんはわたしよりも可愛くはない。 この一年は先輩の威厳が保てそうだ。 やったね! 一か月後、月間営業成績発表会にて。 「えー、なんと川島君が新人ながら営業成績第三位です! はい、拍手!」 パチパチパチ 嘘だろ、おい。 川島、お前は単なるイケメンじゃなかったのか! ラグビーマンが最下位って、もっとトライしろよ。 童顔は……フン。 大変だよね、ちっちゃいとね。 しかし、川島、二年目の私よりも上とはどういうことだ。 営業の禁忌、マダムと一夜を実行したのか。 あれは係長の冗談だぞ。 愕然とする私に、みっちゃん先輩が肩を叩く。 「下園、あっさり抜かれたな」と。 お前も抜かれているんだぞ? 私と二人差なだけだ。今年中に抜いてやるからな。
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