国立超心理学研究所

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「賭場に行ったんだがな」 「はあ?」 「さすがに子連れじゃ断られた」 「当たり前でしょ! 何考えてるんですか!」 「エリカに聞いてみろよ」 「そういう意味じゃありません」 「いやー、エリカがいりゃボロ儲けだと思ったんだが。その後、メシを食いに行きつけの小料理屋に行ってな、そこのママが俺の事をどう思ってるか、エリカに探らせたんだわ」 「ちょっと!」 「『お酒が過ぎなければ良いお客さん』だってよ。酒を減らせばワンチャンあるって事だよな」  どこから突っ込んで良いのか。いや、もうこの人のペースには巻き込まれないぞ。 「課長。僕は決めました。江利香ちゃんを研究部に回すのはやめましょう。あの子の能力が世間に知れたら、あなたのような輩が山ほど現れるに決まってます」  僕は決意を胸に、課長の前に立った。課長はベッドに腰掛け、シャツとズボンを脱ぎ散らかし始めている。この人が何と言おうと、江利香ちゃん親子のために、自分の考えを押し通すつもりだ。 「ふーん。いいんじゃねえの」 「え?」 「本物の超能力者が1人見つかったらよ、大塚の野郎が『他にもいるはずだ、探してこい』ってうるさく言ってくるに決まってる。無かった事にしちまおうぜ。で、どうするんだ?」  てっきり、大塚室長を見返すための切り札として江利香ちゃんを利用するのだと思い込んでいたので、課長の反応に意表を突かれた。 「へ? あー、だから間違いでしたって、研究部に伝えて、お母さんの所へ江利香ちゃんを返せば良いだけでしょう?」 「バーカ、それじゃあ公式の記録に残らんだろ。天下の国立超心理学研究所に、超能力者じゃないって証明をもらうんだよ」 「どうするんですか?」 「検査のとき、相手の心なんか読めないフリをしてもらえば良いだけだ。簡単なことさ」 「そう上手くいきますかね?」 「エリカのやつ、嘘が下手だからな。まぁ、なんとかなるだろ。俺に任せとけって」  この人に任せて、まともな結果になったことがあるだろうか? 大いに不安が残るが、目的は一致しているようだ。何かあったら僕が軌道修正するしかない。
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