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夜も更けて来ると、ようやく消灯の時間になった。
これで修学旅行の一日目も終わりというわけだ。
部屋の電気が小さく落とされると、僕らはそれぞれの布団に入った。
とは言え、すぐに眠れる生徒はいないようで、ボソボソと話をする人や、スマホをいじっている人もいたりするけど。
そんななか、僕は隣で寝ている黒田君にちらりと目を向けた。
彼は完全に僕に背中を向けて横になっている。
こんなに近くで眠っているのに、その後ろ姿はやけに遠くて。
なんだか全然知らない人を見ているみたいだった。
ねぇ、黒田君。
そんなに僕のことが嫌なの?
顔も見たくないくらい、姿も見たくないくらい、話もしたくないくらいに嫌い?
でもさっき黒田君が助けてくれて、すごく嬉しかったよ。
僕が嫌いでも、そうやって助けてくれたことが。
ねぇ、お願い。
ちょっとだけでもいいから、こっちを向いて。
そして出来ることなら、僕に笑顔を見せて。
他の誰かに向けた笑顔じゃなく。
僕だけに向けた笑顔を。
そんなのもう無理だってわかっていても。
僕は彼の背中を見ながら、ずっと願っていた。
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