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「いらっしゃいませ。」
朝、出勤前にいつものコンビニに足を踏み入れると、いつものルートでサラダの棚に向かう。
ナチュラル・ハイジーンを実践する俺は、毎朝サラダオンリーだ。
とはいえ、本来体内の酵素を活性化させる食事療法だけに、
本当は、毎朝フルーツを食べるのが望ましい。
ただし、毎朝甘いフルーツを食べることは、甘党ではない俺の矜持に反するのだ。
透明なプラスチックボウルに入ったサラダと青じそドレッシングを手にレジへ向かった。
俺はそこでハタと立ち止まった。
コンビニには6つのレジがあるが、右から2つ目だけが異常に長い行列を作っていた。
これは何かある。
レジ打ちをしている、頬にソバカスのある茶髪の若者を見た。
やる気のない眠そうな顔をして、愛想もない。
いやしかし、意外にもアイツは人気者なのだろうか。
最近は、芸能人にもフツーな感じの女性の方が、超絶美女よりもウケが良いこともある。
侮るなかれ。あんなやる気のない素振りをしていて、実はカリスマ店員なのかもしれないぞ。
俺は、列をなす人々を観察する。
ここはオフィス街だけに、リーマンにOLがほとんどだ。
ただ、彼らの表情には共通して微妙な緊張感を漂わせている。
モノは試しだ。
俺も、2列目に並んだ。
しばし待つと、俺の会計の番が来た。
右手でサラダとドレッシングを差しだし、左手のSUICAでレジをタッチする。
「ピっ」
若者はサラダとドレッシングを雑な手つきでビニール袋に詰めると、
俺に向かって手渡した。
その店員は、気だるい声で、
「あっした~」
と言った。
レジから離れて振り返ると、未だ二列目だけに相も変わらず長蛇の列。
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