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「七生の父親を、思い出させたくなかった。最初の日はあのままだと、お前は逃げてしまいそうだったから抱いた。だけど、辛い思いをしたお前を抱けば壊れてしまいそうで手が出せなくなった」
「親父?」
意外な言葉を聞いた気がして力が抜けた。
忘れていた。
父親のことなんか、これっぽちも思い出さなかった。加納に抱かれる時は、加納で一杯だったから。
「我慢してたんだが、毎晩お前の無防備な寝顔をみているとつい耐えきれなくて、あの時はおれも自己嫌悪でどうにかなってしまいそうだった。気絶させてしまって……。自分の節操のなさに落ち込んだよ」
確かに2回目に抱かれた時は、無茶苦茶に扱われた。乱暴と言うよりは、激しさでもみくちゃにされて、大人の性愛を叩きこまれた気がした。
だけど、
「嫌じゃなかったのに」
言うと、加納は七生の肩を掴んだまま体を離し、今度は確かめるように顔を覗き込んでくる。思わず俯いた七生は、なんだか恥ずかしい方向へ向かっているようで赤くなる顔が抑えられない。
「い、嫌じゃなかった。一杯抱いて欲しかった。ずっと待ってたけど加納さんはおれじゃその気にならないんだと思った」
覗き込んだ加納の顔がスッと冷えたように見えた。また何かが変わったのか、いやいつもの加納に戻ったのか。
「だったら毎日抱いてやる」
低く呟かれたそれは、舌舐めずりするように艶っぽく七生はゾクリと身震いをした。
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