#3[神様でもなければ不可能な話]

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#3[神様でもなければ不可能な話]

《1/2》 「ちょっと待て。既に他の捜査員が彼らの家族や近所の人、同級生にも聞き込みは行ったが、宗教団体に加入していたという様な話は一切上がらなかったぞ」 「中野さん、僕は一言も〝宗教団体〟とは言ってませんよ?もし本当にそういう類の団体が関係しているのなら、この事件は少し規模が小さ過ぎます」 「確かにな…。でも、だとしたら一体誰が」 中野さんは、段々と増えていく難問に苛立ちを隠せない様子だ。 「実は少し前に、知人の心理士から聞いたことがあるんです。〝ピエロ〟という、一言囁くだけで対象を自由自在に操れる人がいると」 「そんなものは、ただの噂にしか過ぎん。神様でもなければ不可能な話だ」 更にイライラし始める中野さんから、僕は少し距離を置いて話を続けた。 「僕もそう思ってましたよ。今回の事件が起きるまでは…」 「もしも〝ピエロ〟が実在するとしたら、時刻や場所も操れる筈です」 「確かに、一区から三区の間で同時刻に起きたという点に関しては、一番辻褄が合う答えだが…」 「もしそれが出来るとして、こんな残酷な事件を起こした動機は何なんだ」 「それはまだ分かりません…」 「ただ…。これは僕の単なる勘ですが、何か凄く嫌な予感がするんですよ」 俯きながら、地面に向けて小さく呟いた。 すると突然、中野さんは僕に詰め寄り、顔を覗き込んできた。 「…シロ」 「…は、はい」 「お前、そんな深刻な顔出来るんだな」 「 えっ」 僕は、何故か嬉しそうな顔をしている中野さんと共に、取調室を後にした。
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