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驚きすぎて無言で顔見合わせてから、大きな声で発狂した。
「どーすんの!キツネが余計な事言うから……」
「待って、待って…迷信でしょ昔の話だし、力が吸収されたかまだ分からんぞ」
木村さんがドア付近に立っているのを見つけた社長は、縋るように腕を持ちながら訴えかけてきた。
「キムも知ってるよね~河童の昔話、あれ迷信だよね?」
「さぁ、何とも言えませんが百合ちゃん何かあったの?」
「手の上で消えたんです」
サーッと顔色が変わった木村さんは、私の手首を触ったり首元を覗くと社長を手招きしている。
「社長、目……見て下さい」
二人に覗きこまれ『早く何か言って!』と心の中で祈り、強張った顔で見つめていた。
「般若は時によって表情を変える。金色の目でお怒りになられたり、緑色の目で処刑されたりもする」
「おいジジイ、ワシの目の色また変わっとんか?化け物になっとんか!」
「百合ちゃん、暴れる前に検査室行こう」
木村さんに手を引かれ肩を落として通路を歩く。
少し間を開けて社長がついて来るのが分かったが、もう怒る気力もなかった。
「失敗した…こんな事ならキンピカの像にしとくんだった。貧乏人が金色選んでミスするのもヤダからあえて避けたのに」
「そう?恐らく身体に異常はないと思うから、またレベルが上がったと思えばいいんじゃない?」
金色の目でも化け物扱いされたのに、瑠里からもきっとイジられる。
彼女どころか嫁の貰い手もなく、イザリ屋に居る以上化け物のまま死んでいく縁起悪い未来しか思い浮かばない。
「……もう嫁に行けない」
「そんな事ないわよ、社内恋愛は?百合達はまだ会ってない人が沢山いるし、王子が現れるかもしれないよ」
「ここ、変わった人ばっかで嫌なんです」
検査室に入るとカプセルの中に入れられ、木村さんが操作していたが、睡魔と疲れでいつの間にか眠っていた。
機械音がして目を開けると、身体の疲労が取れていてよく寝た後のスッキリ感と軽い感じもする。
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