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鎌イタチの里
「ではこの紙パンツに履き替えたら、タオルのボタンは背中に向けてベッドでお待ち下さい」
「は、はい……」
カーテンのドアで仕切られた個室にはタオルが敷かれたベッドと洗面台にマシンが置いてある。
かなり恥ずかしいが服も下着も全部脱ぎ、タオルを巻いていそいそと紙パンツを履いた。
隣の部屋で恐らく瑠里も同じような気持ちでいるに違いない。
私達は休みを利用して念願だった『お試し脱毛』に来ていた。
フリーペーパーで何処が安いかチェックして、吟味を重ねた結果ここを選んだ。
スタッフは全員女性だし説明も丁寧だったが、さすがに初めての体験で緊張は高まる。
まずはうつ伏せになり、左半分からシェービングが始まった。
ジェルを塗り機械から光が出ると、ピピピと音を立てながら身体に滑らせていく。
下を向いてるので恥ずかしさはまだ半減するが、それでも脚、太腿からお尻の山を越え背中まで機械が登山……という事はスタッフの人に見えている。
終わると次は仰向けにチェンジ。
同じ工程をリピートされるが、Vラインを整える際はタオルで半分は隠れてるとはいえ、顏が燃えそうに熱かった。
『モロ見えじゃん!』
顔もコースに入っているので光を当てたあと冷やしタオルを置かれてホッとする。
恥ずかしさで燃えるような赤い顔には丁度いい温度だった。
終了すると希望のドリンクを聞かれ、スタッフは即退散してくれる。
本当なら『見えましたよね?かなりハズいんですけど大丈夫でした?』とか言い訳を聞いて欲しかったがホットタオルで身体を拭き服に着替えた。
カーテンを開けるとメイク台が並んでいるが、隣と並ばないように、少し間をあけてコーヒーが用意されている。
スッピンの人が顔を合わせないよう考慮されていた。
アンケートを書いてコーヒーを飲んでいると、挙動不審で辺りを伺うように、妹もカーテンから出てきた。
普段なら真っ先に感想を聞いて来るのに、三つくらい離れた席で紅茶を飲んでいる。
恐らく店を出てから話をする気だと思い、一足先に記入を済ませ受付に向かった。
「お疲れ様でした~」
さっき担当してくれた女性に笑顔で挨拶されると、全部見られた事もあり妙に親近感が湧く。
脱毛後の注意事項の説明を受けると、ようやく恥ずかしい時間から解放された。
エレベーターで降りエントランスで待っていると、暫くして妹も扉から出てきた。
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