0人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
「うちの店は、神様や妖怪等、人間ではない方々を相手にしているんですよ」
内緒ですけどね、と人差し指を口許に宛がって笑う男性に、私はなんと返して良いものか迷う。
これはからかわれているのだろうか。それとも、本当のことなのだろうか?
しかし、どう見ても男性が嘘をついているようには見えない。
「…神様とか妖怪って、本当にいるんですか?」
「居ますよ。現に貴方も昨日見たでしょう?」
見たもなにも、私は変わった服を着た子供達を見ただけだ。あれが狛犬かどうかはわからない。
それをそのまま言うと、男性は笑った。
「それなら、自分の目で確かめれば良い。幸い貴方は見えるのだから、この店に居ればいつでも会えますよ」
「え?」
言葉がよく分からない。どういう意味だろうか。私は思っていることが顔に出たらしい。
彼は、にっこりと優しい笑みを浮かべた。
そして。
「貴方はさえ良ければ、この店でバイトしませんか?」
バイト代は弾みますよ。
そう言われて掲示された金額と好奇心に、私の背中はぐいぐい押された。
それから数日後。
私は、その店でバイトすることに決めた。
実を言うと、男性が格好良かったのも理由の一つだ。
こうして、私は彼と出会った。
これから先、長い人生の伴侶となる彼と。
end
最初のコメントを投稿しよう!