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あの部屋は、今もあの頃のまま。
あの日から、時計の針は進まない。
もう1年・・・まだ1年。
あの頃と何も変わらないのに、彼だけが居ない。
「そろそろ、あの子の部屋を片付けましょう」
そう言ったのは辛そうに顔を歪めた母親。
「そうだな。そろそろかも知れないな」
そう返して目を伏せたのは父親。
テーブルを挟んで対面に座る私は、心もとない気持ちのまま両親の話をぼんやりと聞いていた。
「桜(サクラ)、柊(シュウ)の部屋を片付けましょう」
母親は今度はそう言って私を見る。
「・・・っ・・」
何とも言えない苦しさに下唇を噛み締めてうつ向いた。
どうして、柊の部屋を片付けるの?
まだ一年しか経ってないのに。
「桜の寂しい気持ちも、柊の部屋を片付けたくない気持ちも分かる。だけど、残された俺達はそろそろ前を向いて生きていかなきゃいけないんだよ」
父親が辛そうな顔で私を諭す。
「片付けなくても前を向いてるわ」
あの部屋は関係ない。
「いいえ、桜は柊が居なくなってからもあの部屋に囚われたままよ」
母親が悲しそうに顔を歪めた。
「・・・っそ、そんなことない」
ガタッと音を立てて立ち上がるとリビングを飛び出した。
小走りで向かうのは柊の部屋。
今はもう居ない、私の大切な片割れ。
あの日、柊は突然居なくなってしまった。
クリスマスで誰もが心を踊らせていたあの日、柊は短い生涯をひっそりと終えたんだ。
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