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柚の声色で、ウロウロ彷徨ってた視線をチラリと戻したカシタは「暴力反対よ」と、また視線を下げた。
「ところで、それは何日前の話ですか?昨日ですか?今日ですか?」
スンと表情をなくした柚が聞くと
「んー、多分、十日ほど前かしら?」
カシタは首をかしげる。
「あら、それは随分前からなのかしら?十日も経っておきながら、今更相談なんてあるのかしら?」
「んもぅ、怒らないで聞いてよ。私だって定かじゃないのよ。」
「定かじゃないのに、恋人って作れるもんなの?何、ある日起きたら突然恋人が出来るとか、世にも奇妙な事が起こるの?空から人が降ってきたり?」
カシタを捲し立てる柚に
「空から来たんは柚やん」と山崎が心の中でツッコミを入れた。
「だってぇ、なぁんか繋ぎ繋ぎな感じで、細切れで記憶はあるんだけど、次の日買い物してたら捕まったのよ。」
「捕まったって、何か盗もうとしたの?お店の人と喧嘩?」
「違うわよ!買い物してたら『昨日一緒にいたのに、今朝起きたらもう会いたくて。本当に会えるなんて嬉しい』って嬉しそうに頬を赤く染めて話しかけてきたのよ」
気まずそうに話すカシタに対して、また真顔になる柚。
「ぇ、待って、何ソレ。女の人ですか?」
柚の表情管理は大変やな、とカシタに興味ない山崎は、コロコロ表情が変わる柚を楽しんで眺めていた。
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